清水 雅弘(京都大学 大学院工学研究科)
ガラスおよびガラス融液の科学における非平衡現象の解明に取り組んでいます。本研究の「ソレー効果」は温度勾配によって生じる成分の分離現象であり、
ガラス融液の均一性と関係しているため、ガラスの製造においても考慮すべきものと考えます。
本研究ではガラス融液での当該現象の解明に実験・計算・理論の3つの方向からアプローチしました。
一部の酸化物成分・組成について現象を定量的に説明する理論を提案しました。
今後はこの理論が他の酸化物成分・組成にも成り立つことを証明したいと思います。
守友 浩(筑波大学 エネルギー物質科学研究センター)
持続可能なエネルギー社会を実現するためには、自然エネルギーを高効率にエネルギーに変換する必要があります。
太陽光、風力、地熱を電気に変換する技術はありますが、室温付近の熱を電気エネルギーに変換する技術はありません。
私たちは、「熱発電セル」という新概念のデバイスで温度変化を電気エネルギーに変換することを提案し、そのための材料開発を進めています。
並河 英紀(山形大学 理学部)
科学技術の発展は我々の生活を豊かにするだけではなく、新たな課題・難題を突き付けることもあります。その一つが抗生物質です。
多くの人々の生命を救ってきた一方で、多くの人々の生命を奪っていることも紛れもない現実です。
我々は、持続的な社会の発展へ向け、抗生物質を含む生理活性物質の生体内での挙動を分子スケールで理解する研究や、その理解基づいた新しい生理活性無機化合物を設計する研究を行っています。
亀山 達矢(名古屋大学 大学院工学研究科)
近赤外光領域で発光する半導体量子ドットは、励起波長が限定されないことや、励起光や細胞内での耐久性が高いことなどの特長があり、特に生体を外部から観察する in vivoイメージングへの利用が期待されています。
しかし、従来の主な近赤外発光性量子ドットはCdやPbを含むため、その利用が制限されてしまうという課題があります。
私は、I-III-VI族半導体をベースに、Cd, Pbを用いない、新しい量子ドットの開発に取り組み、さらに自在な発光波長制御を可能とすることで、本当に“使える”量子ドットの創製を目指しています。
宮内 雅浩(東京工業大学 物質理工学院)
これまで、光触媒による環境浄化や人工光合成の研究を行って参りました。光を当てると色が変わってしまう材料は光触媒としてはあまり使えませんが、表示素子や遮光膜としての使い道があります。
本研究助成の支援のもと、量子ドット・ナノシートを使った新しい色変換素子の開発に挑戦しました。
その結果、多色制御・高速繰り返し変換可能な色変換素子を提案することができました。実用的な素子に発展させるため、無毒で安価な量子ドットの合成にも取り組んでいます。
<事務局より>
研究の発表は、通常、事実のみを客観的に説明するものですが、今回、各講師にお願いして、
あえて、研究テーマの今後への熱い思いを書いて頂きました。レジュメ、講演に加えて、これらが本日お集
まりの皆様と各講師との意見交換・交流のきっかけになればと願っています。懇親会にもぜひご参加ください。
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