公益財団法人 日本板硝子材料工学助成会

各講師から一言(研究テーマの今後への思い)
徳光 永輔(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科)

1992年より強誘電体ゲートトランジスタを研究しています。 当時はシリコンデバイスのチャネル電荷量と強誘電体分極を整合させるため、構造、材料両面から分極を等価的に小さくする工夫をしていました。 これは何か違うなあと感じ、酸化物チャネルを用いて強誘電体のフル分極を活用することを思いつき、これが動作した時の喜びは今でも覚えています。 その後溶液プロセスと出会い、酸化物との相性の良さから安価で簡便にデバイス作製する技術を研究したのが今回の内容です。 自分としては2つのオリジナルなアイディアを融合した研究と思っており、もう少し続けていきたいと考えています。

根岸 雄一(東京理科大学 理学部第一部応用化学科)

エネルギー・環境問題の解決のため、水分解光触媒について研究を行っています。 水分解光触媒は、これまで着実に深化し続けてきていますが、同様な視点からの研究推進だけでは、いずれは技術の進展も緩やかになってしまうと危惧されます。 私達は、金属原子の凝集を原子精度にて制御するという、無機ナノ粒子に対する極限的なナノテクノロジーを確立しています。 本研究では、そうした技術により水分解光触媒の活性部位を制御することで、水分解光触媒の活性を高めることに成功しました。 こうした専門分野を越えた学際的なインタープレイが、ブレークスルーを創出し、水素社会の実現をさらに一歩近づけると信じ、私達はこのような研究を行っています。

森 龍也(筑波大学 数理物質系物質工学域)

テラヘルツ分光による、ガラス形成物質におけるテラヘルツ帯の普遍的ダイナミクスの起源解明に取り組んでいます。 不規則構造系にはボゾンピークと呼ばれる普遍的励起が現れ、古くからガラスの物理の未解決問題の一つとして研究されてきましたが、これを古くて新しいテラヘルツ(遠赤外)分光を用いて、最新の理論解釈に基いた理解や応用研究を行っています。 一方、ポリマーガラスなどがフラクタル構造を有する場合に期待されるフラクタルダイナミクスもテラヘルツ分光で研究可能であることを世界に先駆けて示し、分光と分子動力学計算による研究を推進しています。 これら普遍的励起の分光研究により、ともすれば従来軽視されがちだった不規則系テラヘルツダイナミクスの新視点による解明を目指しています。

島本(田中)公美子(岐阜工業高等専門学校 機械工学科)

我が国には液晶ディスプレイやレンズなど、高精度な研磨を必要とする国内企業が多く存在します。 その高度生産技術を支えるガラスの研磨材料は主に輸入した酸化セリウムが用いられており、安定供給と価格の高騰が懸念されてきました。 安定した高度生産技術を支持し、国際競争力の向上を図るため、本研究では酸化セリウムの代替材料について、実験的検討を行いました。 今後は更なる研磨能力の向上を目指したいと思います。

山野井 慶徳(東京大学 大学院理学系研究科化学専攻)

エネルギー問題は人類に差し迫った課題です。 その解決策として、光合成を応用したエネルギー変換システムの創製が、地球に優しく持続可能なエネルギー獲得方法として期待されています。 我々のグループでは、耐熱性シアノバクテリアの光合成システムと人工分子をハイブリッドした材料を創製することで、効率の良いエネルギー変換手法や人工網膜への応用を模索しています。

<事務局より>

研究の発表は、通常、事実のみを客観的に説明するものですが、今回、各講師にお願いして、 あえて、研究テーマの今後への熱い思いを書いて頂きました。レジュメ、講演に加えて、これらが本日お集 まりの皆様と各講師との意見交換・交流のきっかけになればと願っています。懇親会にもぜひご参加ください。


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