希土類4f電子単分子磁石の高温動作化と量子効果構造制御
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中央大学 理工学部応用化学科 助教授 石川 直人
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「単分子磁石」は、長距離磁気秩序によらずに単独で極端に長い磁気緩和時間を持つ高スピン分子群であり、次世代超高密度磁気記録媒体への応用が期待されている。これまで、MnやFeを代表とする3d遷移金属クラスター構造をもつ化合物のみが知られていた。申請者は、世界に先駆け、単一の4f金属イオンによって機能する4f単核単分子磁石を見いだした。3dクラスター型に比べその温度領域が圧倒的に高く、応用面において高い優位性をもつ。たとえば、1000Hzの交流磁場に対するブロッキング温度は3dクラスター型の最高値(7K)に対し、申請者が見いだした4f単核単分子磁石Pc2Tb-は40 Kである。
本研究は、4f単核単分子磁石またはこれを構成要素とする量子磁石の高い温度領域(可能であれば常温)での動作の実現を目的とし、これを通じて配位子設計と基底多重項副準位構造の制御法を確立し、新しい4f量子磁石分野の開拓を図るものである。無数に存在する配位子と4f金属イオンの組み合わせの中から以下の4つの手順でその抽出に臨もうとしている。1.強い軸性異方性を与える配位子の設計と新規合成、2.配位子酸化還元による配位子場ポテンシャルと多重項副準位構造の制御、3.超分子構造・多核構造形成を用いたf-f相互作用と磁気緩和時間の制御、4.原子核-4f電子系相互作用と量子トンネリング緩和の制御。世界に先駆けた研究成果が期待される。
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酸化物熱電変換薄膜への低次元電気導電性付与による熱電変換特性向上 |
名古屋大学 大学院工学研究科エネルギー理工学専攻 助手 一野 祐亮
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熱伝半導体の特性は本格実用化に向けてはもう一歩のところまできているが、もう少しの改善が是非とも必要である。最近、低次元積層電気伝導体における熱電特性の良さが大きな話題となるようになった。本研究はその中で超格子系の試みに属するものである。、すでに化合物半導体では例があるが、本申請は酸化物の層状構造を原子オーダーで任意に積層することで高い熱電特性を得ようとするもので、酸化物のエピタキシーが可能になってきたことから、その挑戦が可能になってきたものである。申請者らはレーザーパルス析出法にてすでにその端緒となる結果を得始めており、その結果が期待される。 |
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ポリ酸分子クラスターを用いたハイブリッド層状結晶の構築と導電特性
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東京工業大学 資源化学研究所 助手 伊藤 建 |
層状化合物は2次元的に広がった化合物の層が積層して作られているため、導電性、イオン伝導性、超伝導など幅広い分野に亙って特色ある性質を示すものが知られている。しかも、結晶性層状化合物は安定性および構造の均一性に優れており、既にリチウムイオン電池等に利用されている。更に、近年では導電性有機分子と無機イオンを組み合わせたハイブリッド層状結晶について導電性や磁性の研究が精力的に進められている。しかし、これ迄の無機および有機ー無機ハイブリッド層状結晶では、層構造の自在な制御は困難であり、層間距離も殆どのものが20 Å以下に止まっている。
本研究者は分子性クラスタ−であるポリ酸分子をモチ−フとして層状結晶を構築すれば、ポリ酸分子を変化させることで容易に層構造を制御できる筈であることに着目し、カチオン性界面活性剤とポリ酸分子(Mo6O102-)からなる層状結晶の合成を試み、成功を収めている。この方法では界面活性剤の炭素鎖の長さを変えることにより、層間距離も可なり自由に変化させ得るという利点もある。この成果を更に発展させ、モリブデン、タングステン、バナジウムなどのポリ酸分子とカチオン性界面活性剤を用いて有機ー無機ハイブリッド層状結晶を構築し、ポリ酸分子層による高い導電性を発現させることが本研究の目的である。この独創的な層状結晶合成法には極めて多様な層状結晶の生み出される可能性が秘められており、研究の進展が望まれる。 |
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ソフト溶液反応による酸化亜鉛粒子膜の精密構造制御と高次機能設計 |
東北大学 多元物質科学研究所 助教授 殷 |
本研究では溶液中での自己組織化反応を利用し、様々な基板上にマイクロメートルレベルの酸化亜鉛柱状粒子を所定方向に成長、或いは配列させた粒子膜を直接溶液中で合成し、さらに粒子膜の表面構造及び形態をナノレベルで制御し、多彩な形態制御を行い、反応のメカニズムを解明すると共に、従来の方法で得られない発達した微細構造を有する高機能性無機酸化物粒子膜の設計指針を明らかにする。申請者は、沈澱剤の加水分解速度の制御、前駆体溶液濃度の制御、アニール時間の制御等、反応条件を厳密に制御することによって、世界で初めてナノスクリューというユニークな構造を有する酸化亜鉛粒子からなる薄膜の合成に成功している。これ偶然に発見した現象であるが、通常の六方柱状結晶に比べ、ナノスクリュー状となり、非常に大きな表面積を有する。さらに界面活性剤を加えると、ナノスクリューを溶液中ではなく、液面上で同じ長軸方向に自己組織化した単層膜となり、しかもナノ構造が発達し,一面に広がった表面積の大きな「緻密膜」が得られるようになった。酸化亜鉛ナノ・マイクロ結晶の形態・配列の高次制御により、バルク材料にないスマートな機能の発現が期待される。例えば、ナノロッド構造を有する酸化亜鉛粒子膜の接触角は、超撥水性を示し、ナノスクリュー構造を有する酸化亜鉛粒子膜は超親水性を示し、ナノロッド構造薄膜と全く異なった性質を有することが分かった。このナノスクリューのようなユニークな構造に起因する様々な高次機能と多様な応用が期待できる。 |
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高い屈折率を有するシリコン系フォトニック材料β-FeSi2の育成と光学特性評価 |
茨城大学 工学部電気電子工学科 助教授 鵜殿 治彦 |
β-FeSi2はシリコン基板上でエピタキシャル成長が可能であり、高い屈折率を持つため、新しいシリコン系材料としてのフォトニック結晶への応用が期待されている。フォトニックデバイスとして用いるためには、設計に必要な基礎的な光学定数が不可欠である。しかるにβ-FeSi2結晶の光学定数についての正確な値は得られていない。さらに結晶の歪みによってバンド構造が間接遷移型から直接遷移型に変わるなど、明らかにしなければならないことが多くある。それには高品質なバルク単結晶の育成、あるいは完全性の高い薄膜の成長が不可欠である。しかしこれまでにβ-FeSi2単結晶はヨウ素を輸送剤とした化学気相輸送法(CVT法)による針状結晶が作られているだけであった。そのため物性評価は限られ、光学特性などはあまり測定されていなかった。そうした状況下で金属溶媒を用いた溶液から、板状のβ-FeSi2結晶(直径10mmΦ)の育成に初めて成功した。これは高く評価できる。そしてこの単結晶を用い、これまで直接遷移型といわれていたβ-FeSi2が間接遷移型であることを明らかにしている。
そこでまずβ-FeSi2の高品質なバルク単結晶を育成し、その基礎的な光学定数、バンドギャップ、電子構造を正確に決めようとしている。β-FeSi2は斜方晶で、結晶方位に依存した異方性をもち、a,b,c各軸に沿って光学定数を決めなければならない。そのためa,b,c各軸方位の板状結晶を育成することも視野に入れている。非常に意欲的な基礎研究で、フォトニックデバイスの発展に大きく寄与することが期待できる。 |
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3次元フォトニック準結晶の開発 |
東京大学 生産技術研究所 助教授 枝川 圭一 |
フォトニック結晶は誘電率が光の波長程度の周期で変調した人工的な構造体で、これを用いて光集積デバイスを作ることが可能になる。それにはフォトニックバンド構造に完全バンドギャップ(特定の周波数領域で光の伝播があらゆる方向に禁制)が形成される必要がある。通常の結晶構造の3次元系では、ごく少数の完全フォトニックバンドギャップが作られている。周期秩序のない、3次元系の準結晶構造秩序を利用して、完全バンドギャップがあるでフォトニック結晶を実現しようとしている。ただし2次元系ではすでに成功し、レーザー発振を観測している。この場合、吸収体として色素レーザー用のAlq3 (Tris-(8-hydrooxyquinoline)aluminium) doped with 2.5% DCM laser dyeを用いている。3次元フォトニック結晶として(1)各格子点に球を配置、(2)誘電体に3次元に配列した孔を開ける(ドリル穿孔型)の2つの方法があるが、後者を種々の誘電体を用い、孔径と孔‐孔間隔の比を計算で最適化して試作しようとしている。そしてまずマイクロ波領域のフォトニック準結晶を試作する。準結晶は高い回転対称性のため、ブリルアン・ゾーンはほとんど球状である。そのためゾーン境界に沿って完全バンドギャップが比較的容易に実現可能であることに着目したユニークな発想である。短波長化の実現を期待したい。それには吸収体の材料探索も重要だが、吸収体として孔に嵌めあう球を用いるのも一つではないか。 |
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伝導性亜酸化物薄膜の物性および反応性 |
立教大学 理学部化学科 教授 枝元 一之 |
Ag(001)表面を基板にして、亜酸化物のTiO(001)、NbO(001)薄膜を作製し、その物性と反応性を測定しようとしている。一年半前に立教大学に着任し、最初の1年間は東工大から持参した低速電子回折(LEED)とオージェ電子分光(AES)が測定できる超高真空装置、X線光電子分光(XPS)と紫外光電子分光(UPS)が測定できる超高真空装置の立ち上げに時間を費やし、その後TiO(001)の作製に取りかかった。これら亜酸化物はNaCl型結晶で、格子定数はAgに近いので、Ag(001)を基板に選んだ。そしてTiO(001)単結晶薄膜を作製するため、Ag(001)の清浄表面とTiの蒸着源を作製した。O2圧を3桁変えた雰囲気下でTiを蒸着し、O/TiのAESシグナル強度を蒸着時間の関数として測定したところ、相違がなかった。これはその後の研究にとって大変有用な知見である。そこでO2圧が1×10-6 Torrの雰囲気下、室温でTiを蒸着し、600℃まで加熱すると、1×1のLEEDパターンが得られ、AESスペクトルの強度比から見積もってTiOに近い組成のものができている可能性が高い。しかしTiC(001)を酸化することでTiO(001)を作製した彼らの研究結果を見ると、1000℃までの加熱が肝要である。それにはAg基板は不適当で、高融点の金属基板を考える必要があるのではないか。TiO(001)ができたならば、UPSによりCO,H2,SO2分子の吸着状態を調べたり、反応性の測定を予定している。表面科学は表面という場を活かした特長のある物作りに挑戦すべきであり、この研究はそのよい例である。 |
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構造制御型固定砥粒研磨パッドによるガラス材料の高能率仕上げ加工技術に関する研究 |
大阪大学 大学院工学研究科機械工学専攻 助教授 榎本 俊之 |
光学ガラス、ディスプレイ基板ガラス、ディスク基板ガラスなどの研磨加工は機能の発現にとって極めて重要であるとともに、高いコストのかかる過程である。現在、ガラスの研磨は酸化セリウム砥粒を含むスラリーによって行なわれているが、スラリーの廃棄は大きい環境負荷が問題となっている。これにたいし、加工の高能率化と高精度化をめざして固定砥粒研磨が検討されているが、加工能率が低いという欠点がある。本研究は固定砥粒研磨パッドの構造に工夫を加え、固定砥粒研磨の加工能率を高めることを目的とする。
本研究では、研磨パッド基材内に砥粒を均質に分散させた従来のパッド構造に代えて、100〜1000nm サイズの酸化セリウム一次粒子を凝集させた粒径5〜500mm の凝集砥粒を、不織布を固めた樹脂パッド中に均一分散させた構造の固定砥粒研磨パッドを開発する。この構造の研磨パッドを使用すると、凝集砥粒から樹脂に被覆されていない微細砥粒が大量に供給され、その微細砥粒が不織布で保持され滞留するので、高い加工能率が得られるものと期待される。
本研究が成功すれば、酸化セリウムスラリーを用いる研磨加工を固定砥粒加工に置き換えることが可能になり、加工能率ならびに加工精度が著しく高められるとともに、環境負荷を劇的に低減することができ、工業的意義は大きい。 |
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アモルファスMgxB1-x膜の超伝導 |
東京工業大学 極低温物性研究センター 助教授 大熊 哲 |
金属化合物として最高の超伝導転移温度(Tc=39 K)をもつMgB2を秋光らが発見して以来、良質な単結晶を得るための研究が広く行われてきた。乱れは一般にTc を減少させると考えられている中で、微視的に乱れの極限であるアモルファス物質に着目し、超伝導を示すアモルファスa-MgxB1-xを作製することに成功した。これはユニークな研究として高く評価したい。そして極めて均質なアモルファスa-MgxB1-xを作製することにも成功している。Tcは組成比xによって滑らかに変化し、Tcの最大値は6K足らずで結晶試料よりはるかに低く、xは1/3(すなわちMgB2の組成)に近い。しかし最近、成膜時の真空度を圧力をわずかに向上させたところ、Tcは10Kを超えた。また成膜時に基板を高速回転させるとTcが大きく変化する。そこでa-MgxB1-xの作製条件(真空度、蒸着速度、基板の回転速度)を変えることにより、現状より十分に高いTcをもつ試料の作製を目指している。またa-MgxB1-xを超高真空中で加熱し、結晶MgB2膜の作製を目指す。これはa-MgxB1-xを原料として簡単な昇温のみで結晶MgB2膜ができることになり、実用面に大いに貢献するであろう。しかし見方を変えて、x=1/3からかなり外れた領域でa-MgxB1-xを作り、結晶化させてみるのもアモルファス超伝導体の機構解明に役立つのではないだろうか。 |
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RFスパッタによる配向性金属-酸化物複合薄膜の合成とメソ多孔質薄膜への応用 |
工学院大学 工学部環境化学工学科 助教授 大友 順一郎 |
申請者らは膜面に垂直配向したメソ細孔を有するシリカ薄膜をテンプレート法により作製し、その用途を開拓しようとするものである。すでにたとえばグラッシーカーボン基板上に多孔質シリカ薄膜を垂直配向させることに成功している。この方法ではミセルテンプレート法や陽極酸化法などの他の方法に比べて表面積のはるかに大きな多孔体が得られる特色を持っている。その用途開発はそれほど簡単ではないと思われるが、新たな材料には必ずそれに合った用途が隠されている。その意味で、この新たな方法を果敢に適用して系統的な材料製造を行い、新たな物質系に拡大する事を期待したい。 |
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デラフォサイト型銅酸化物に着目した新規物性探索 |
鹿児島大学 大学院理工学研究科ナノ構造先端材料工学専攻 助教授 奥田 哲治 |
申請者はデラフォサイト型銅酸化物の層状構造に由来した強い異方性を示す電気伝導と、三角格子上に局在スピンが並ぶ特異な構造(3角格子問題)との相互作用に注目した高いレベルの物性研究を行ってきている。本研究ではさらにそれを延長する形で高温超伝導、超巨大磁気抵抗効果、重い電子系などとの相互作用に注目しつつ研究を進める。本申請では冷凍機伝導冷却型の高圧セルを開発する予定である。申請者は3角格子などが織りなす特異な量子物性に注目して、関連物質の合成から測定までを行おうとしており、道はかならずしも平坦ではないであろうが、その成果に期待するものである。 |
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低温域燃料電池電解質への応用を目的としたリン酸塩ガラスハイドロゲルの構造設計 |
名古屋工業大学 大学院 教授 春日 敏宏 |
プロトン伝導体として、Nafionに代表されるパーフルオロスルホン酸系イオン交換膜が注目されており、これを用いた固体高分子型燃料電池の実用化研究が進められている。しかし、現在の最も大きな問題のひとつは電解質が非常に高価であること、電極やセパレータなどのデバイス化の部品の装着には高い平面精度が要求され、このこともコストパフォーマンスで大きな課題となっている。申請者らは、ある種のメタリン酸塩ガラスを粉砕し水と混合すると、粘稠性のゲル状物質に変化することを見出した。現在、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛ガラスについてのみゲル化が可能であることがわかっている。このゲル状物質には多くの動きやすいプロトンが存在し、室温で10-3〜10-2 S/cmの高いプロトン伝導度を示す。このハイドロゲルは水と溶融法で作製したガラスから作製されるため、従来のプロトン伝導体より極めて安価に作製できる。このゲルは基本的にリン酸を主成分としていること、及び粘性があるため、イオン性液体やリン酸、硫酸に比べて漏れや腐食性に対しての安全性が高く、環境を重視した新素材とも言える。本研究では、このハイドロゲル構造をベースに新たな分子構造設計を行って、Al3+イオンの導入やプロトン伝導性を検討し、長期稼働に耐える安定性を有し、かつ電極との接着性に優れる素材を開発し、今後の低温型燃料電池への応用に結び付けることを目的として研究を行う。新型燃料電池の有力素材候補となると思われ、その開発成果が期待される。 |
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SiCパワーデバイス高性能化のためのp型SiC中のキャリアライフタイム測定とそのコントロール技術の確立 |
名古屋工業大学 大学院工学研究科 助手 加藤 正史 |
SiCパワーデバイスはSiパワーデバイスの特性を大きく凌駕する次世代の電力変換素子として注目を集めている。結晶成長の進展と共にパワーデバイスの研究・開発が花開き、ショットキーダイオード、MESFET(金属-半導体 電界効果トランジスタ)などのデバイスが実用化されている。最も有力なデバイス構造はMOSFET(金属-酸化膜-半導体 電界効果トランジスタ)であり、酸化膜/SiC界面制御の研究・開発が精力的に行われている。MOSFETの実用に際しては、p型SiCの物性の把握が必須となってきている。n型SiCの電気的特性は広く調べられているが、p型に関しては基礎物性の研究がほとんど行われていない。
本研究は、p型SiCのキャリアライフタイムの精密測定とその制御に関するものである。具体的には、高抵抗SiC基板上にエピタキシャル成長したp型SiCのライフタイムをマイクロ波光導電減衰法を用いて測定する。波長の異なるレーザで励起することによって、表面再結合の影響を除去し、加えて温度特性を評価する。Heイオン打ち込みによってライフタイムの制御を試みる。これらの基礎物性は、MOSFETのデバイス構造の設計、デバイスの静・動特性のシミュレーションに際して、基本データベースとしてたいへん有用になる。 |
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新原理に基づく環境負荷を低減させた電気メッキ技術の開発 |
九州大学 大学院工学研究院 助手 鎌田 海 |
本研究は強い酸性の液体を使う従来型のメッキ浴に代えて、環境負荷の小さな中性の水溶媒を用いた新規な金属メッキ技術の開発を行おうとするものである。その方法は金属酸化物膜を水溶媒中での電気泳動法により作製した後、同じく中性電解液中で還元処理を行い金属化するという、全く新しい原理に基づいている。既に申請者らは亜鉛、ビスマス、スズについては実際に酸化物微粒子から金属皮膜を電極板上に形成することに成功している。また、多くの酸化物微粒子が電気泳動電着出きることが示されているので、申請者らはこの方法を用いてさらにその他の金属にも適用範囲を広げられると考えている。多様性の拡大がどこまで進められるかに期待したい。 |
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エステルの不斉合成ならびに光学分割機能を備えたシリカモノリスの設計 |
九州大学 大学院工学研究院化学工学部門 教授 川上 幸衛 |
キラル医薬品の生産には、有機溶媒中で機能する生体触媒を用いる不斉合成や光学分割を高収率で行なうマイクロバイオリアクターシステムの構築が必要である。
本研究では、内径 数100μm〜数mm のマイクロチューブ内にメチルトリメトキシシランとメトラメトキシシランの混合物から誘導される酵素(リパーゼ)固定化多孔質シリカモノリスを形成させ、目的のグリシド−ルのエナンチオマーのエステル化反応の選択性に対するシリカモノリスの作製条件の影響を検討する。また、シクロデキストリンの誘導体をシリカモノリスに固定化し、合成生成物キラルエステルのクロマト分離能を検討する。これらの結果に基づいてエナンチオ選択性に優れた固定化リパーゼマイクロバイオリアクターを前段に、修飾シクロデキストリン固定化光学分割カラムを後段に配置し、ラセミ体基質の立体選択的なエステル化反応と生成物キラルエステルのエナンチオ選択的分離を達成し、最適条件を明らかにする。
本研究の発展によってキラル医薬品の高収率の、環境にやさしい生産が可能になることが期待される。 |
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分子自己組織化を用いたアモルファスベーマイト皮膜によるガラス表面の超撥水加工の研究 |
神奈川大学 工学部応用化学科 教授 小出 芳弘 |
ガラス表面の撥水加工は新しい表面機能の一つとして様々な製品に応用可能な技術であり、近年その重要性が増すにつれ優れた成果が報告されている。中でも安価かつ安全な原料である酸化アルミ化合物の応用技術は将来この分野の主流となる可能性がある。本研究ではベーマイトの名で知られる水酸化酸化アルミ(AlO(OH))がカルボキシ基と反応することに注目し、分子自己組織化を利用して、ベーマイト粒子をガラス表面に固定した上でこれを焼成することにより、表面の適度な凹凸により撥水性を示すアモルファスベーマイト薄膜の構築を目指す。基本技術開発のためにガラス基板上における有機シラン化合物の自己組織化単分子膜(SAM)の形成とベーマイト粒子の固定、加熱あるいはマイクロ波照射アニーリング処理によるアモルファスベーマイト構造への変換という3工程からなる実験を行う。特に従来の焼成法に代わる新手法として近年注目されるマイクロ波照射は急速アニーリング手法として優れた結晶性や構造の均質化に結びつく可能性があり、その対象物質への直接加熱は従来の外部加熱では予想外の生成物を与えるといった新しい結果が得られる可能性がある。 |
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シリコンをベースとする環境に優しい直接遷移型ナローギャップ半導体の開拓 |
筑波大学 大学院数理物質科学研究科電子物理工学専攻 助教授 末益 崇 |
「波長が数μm以上の遠赤外線領域はテラヘルツ領域に相当し、環境分析、電波天文学、半導体物理学等の広い分野で分応用上重要さを増している波長帯域である。このような遠赤外線の検出には、禁制帯幅の小さい直接遷移型のIII-V族化合物半導体InSb、 InAsや、II-VI族化合物半導体のPbSe(S)、 Hg1-xCdxTeが使われている。しかし、このような重要な半導体が、資源の極端に少ないInや、毒性の強いAs、 Hg、 Cdで構成されている点に問題がある。このため、同じ性能を発揮するなら、資源が豊富で環境にやさしい元素を使った半導体になればすばらしい。」と申請者は研究の動機を述べている。
申請者は、SiをベースとするSr2Siに注目し、理論計算から禁制帯幅が約0.4eVの直接遷移型半導体(Γ点)であると予想し、実現を目指している。すなわち、GaAs等の化合物半導体で使われているバンドギャップエンジニアリングの手法を用い、資源の豊富なSr2Siをベースとして禁制帯幅をSr2Siの約0.4eV(μ=3μm)からゼロギャップまでの拡張を目的としている。テラヘルツ帯の発光及び受光デバイスとなり得るSiベースの新しい半導体を実現する基礎構築を視野に入れたものであり、未知の領域を開拓するものとして意欲的である。新しい材料への挑戦として息の長い研究が期待される。 |
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粒子アセンブル・転写技術によるナノスケール粒子の構造化技術
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京都大学 大学院工学研究科 助手 菅野 公二
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近年、マイクロ・ナノ粒子をアセンブルもしくは集積化することによって、光機能材料、光デバイスやバイオデバイスといった新規な材料・デバイスを創製しようという研究が多分野で進められている。マイクロ・ナノ粒子を集積化する方法としては粒子の沈降を利用する技術、或いは電場等の外場や表面修飾パタ−ンを用いた自己組織化技術が用いられてきている。しかし、従来の沈降法では任意の微細粒子パタ−ンを集積構造体内に形成することが出来ない上に、粒径が小さくなる程、長時間を必要とする。一方、自己組織化技術では大量の粒子を同時にパタ−ン化できるが、その構造を制御することは困難である。
これ等の困難を克服するために、本研究では全く新しい方法による微粒子の集積化が試みられる。先ず、シリコン基盤に電子ビ−ム・リソグラフと反応性イオンエッチングにより微細溝パタ−ンを描き、誘電泳動を用いて微粒子を微細溝に充填する。これをキャリア基盤に一度移し、更にタ−ゲット基盤に転写する。キャリア基盤表面には室温では親水性であるが、32℃以上では疎水性を示し、粒子・基盤間の付着力が高くなるn-イソプロピルアクリルアミドを用いて、温度変化により粒子・基盤間の付着力を制御する。この独創的な微粒子集積化法はナノメ−トルスケ−ルの粒子による任意のナノ構造を作製することを可能とし、マイクロ・ナノ粒子による材料・デバイス作製において、基礎的な構造形成技術に成長することが期待される。 |
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多孔質ガラスと単層カーボンナノチューブの複合体を利用した光学材料の作製 |
京都産業大学 理学部物理学科 助教授 鈴木 信三 |
単層カーボンナノチューブは、グラファイト面を一層だけ丸めた筒状の構造を持つ炭素物質であり、その直径やねじれ方(Chirality)の違いにより半導体的或いは金属的な性質を示すことが、理論及び実験の両面から明らかにされつつある、極めて興味深い物質群である。申請らは、分相法によって異なる孔径を有する多孔質ガラス素材を作成し、その場を利用して金属微粒子を担持させると、単層カーボンナノチューブが効率良く作製されることを最近見出した。この方法では、比較的薄い板状のガラス素材など、任意の形のガラス素材に多孔質を形成させることが原理的には可能であるため、板状のガラスの内部に孔を開けて、その内部に単層カーボンナノチューブを成長させることができれば、その素材をそのまま光学材料として用いることが期待できる。また、半導体的特性をもつ単層カーボンナノチューブは、固相及び液相中で孤立分散した状態では、半導体ギャップに相当する発光が見られること、またそのエネルギーがそれぞれのチューブのchiralityに大きく依存することが知られているので、chiralityを選択したチューブをこうしたガラス素材中に作製することが可能になれば、発光素材にも成り得る。本研究計画を進めることにより、多孔質ガラスの特性と単層カーボンナノチューブの光学特性の両面を生かした、新しい光学材料を作製する手続が確立できれば、今後単層カーボンナノチューブの直径制御やねじれ方を制御した作製法の開発のシ進歩とともに、新規な発光素材の材料開発が期待される。 |
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反応性TiO2スパッタ膜形成時のプラズマ発光種の同定 |
富山大学 工学部電気電子システム工学科 助教授 高橋 隆一 |
本研究は酸化チタン(TiO2)の半導体単結晶、微粒子状TiO2の粉末や薄膜を用いた光触媒反応により、内分泌撹乱物質量、排気ガスによる大気汚染度並びに二酸化炭素量を低減することをめざしている。従来の研究は多くがゾル‐ゲル法による微粒子状TiO2を用いたが実用的な観点からは扱いが容易な薄膜化技術が必要となる。本研究者は大面積薄膜の高速・低温形成にスパッタ法が適し、プラズマ状態を変えることにより形成膜の構造・特性を制御できると考え対向ターゲット式スパッタ法に着目した。この方法でTiO2薄膜を形成し同時にプラズマの分光分析実験を行い、発光種の同定とTiO2薄膜の形成過程の解明を行う。さらに可視光反応特性に優れた膜の形成条件を見出し、微粒子状TiO2の場合との光触媒としての比較・検討を行う。高密度なプラズマを利用するスパッタ法は反応性に富み、良好な化学結合状態を得るのに有利である。その結果、電気的・光学的特性を制御でき、紫外光から可視光領域にわたり大きな量子効率をもつ薄膜が形成できる。また、酸化は基盤表面上で金属原子と反応ガス分子で起こるとされるために、基板に負の高周波バイアス電圧を印加して膜形成中に適度のイオン衝撃を基板に与え、緻密でガスの取り込みの少ない薄膜が形成できる反面、イオン衝撃エネルギーを自由に変化させて表面が円滑でない粒界の多い薄膜の形成も可能である。 |
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熱ポーリングを利用した新しいガラスの表面改質技術の確立と機能性材料の創製 |
京都大学 大学院工学研究科材料化学専攻 教授 田中 勝久 |
熱ポーリングはガラスに高温で高電圧を印加したのち、高電圧下でガラスを室温まで冷却して内部に誘電分極を生成する過程である。この手法は特にガラスに光学的2次非線形性を付与する目的で用いられてきた。ガラスは典型的な光学的等方体であるため本来2次非線形光学効果を示さないが、ポーリングによりそれが初めて実現した。熱ポーリングではガラスの表面層にのみ極めて強い直流電場が凍結され、これが2次非線形光学効果の起源となっている。本研究では熱ポーリングが無機ガラスの表面電子状態を多様に変化させる上できわめて強力なツールであることを示し、この事実に基づきこれまでには達成されていない新しいガラスの表面改質を実現する事を目的とする。ガラス表面への強い内部電場の凍結と結晶薄膜成長への応用では、基板としてシリカガラスとソーダ石灰ガラスを用い、ポーリングの条件を検討して、安定でかつ強い直流電場を凍結できるガラスの種類とポーリング条件を確立する。続いて、強電場凍結ガラス基板を用い、強誘電体や圧電体として実用的にも重要であるZnO、BaTiO3、PZTを対象にして薄膜成長とキャラクタリゼーション(X線回折、電子顕微鏡観察、SHG測定など)を試みる。比較的簡便な方法でガラス表面領域に非線形屈折率、発光特性、磁気光学効果などの光学的性質の異なる微小な周期構造を作ることが可能になる。これらは2次元フォトニック結晶などとして応用できる。申請者の先駆的の研究実績を踏まえ、これらの研究の進展が期待される。
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強誘電体ゲートを用いた酸化物チャネル大電流透明薄膜トランジスタの研究 |
東京工業大学 精密工学研究所 助教授 徳光 永輔 |
フラットパネルディスプレイと電子回路をパネル中に組み込むシステム・オン・パネルや電子ペーパー等が注目されている。現状の液晶パネルにはポリシリコン薄膜トランジスタが用いられているが、開口率が低下するため透明薄膜トランジスタが望まれている。このためのZnO等の酸化物ワイドバンドギャップ半導体やペンタセン等の有機材料は、電子移動度が極端に小さく、駆動電圧が大きい割に電流値が小さいのが最大の欠点である。
本研究ではこの問題を打破するため強誘電体をゲート絶縁膜に用い、比較的小さな印加電界でもチャネルに巨大な電荷量を誘起する特性を活用する。従来のゲート絶縁膜SiO2を用いるMOSFETに比較して30〜300倍もの電荷に相当するキャリアの誘起が期待される。通常の強誘電体(Bi,La)4Ti3O12などは3eV以上のバンドギャップを持ち、可視光領域での透明性が期待できる。ここでは、石英基板またはガラス基板上に強誘電体/酸化物導電体(ITOまたはZnO)構造を作製する基本プロセスを確立して、本構造を利用した薄膜トランジスタを試作し、電気的特性、光学的特性を評価する。最終的には従来よりも遙かに大きな電流を流すことができる透明薄膜トランジスタを実現することを目指している。オン電流の増大とオフ電流の低減、透明性の改善が課題である。 |
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表面シリサイドの原子構造と形成機構 |
九州大学 大学院総合理工学研究院 教授 栃原 浩 |
大規模集積回路の極微細化が進むにつれて、その製造、動作、機能などにおける表面の影響が増大しており、シリコン上への金属吸着による表面構造の変化などに関心がもたれている。シリコン基盤上に金属を蒸着して加熱すると、吸着原子種、その吸着量や加熱温度により、種々の表面周期構造の生ずることが知られている。それ等は表面金属シリサイドと呼ばれており、興味深い物性を示すものが見出されていることから、金属原子はシリコン原子と表面で特殊な化学結合を形成しているものと考えられるが、その実体は勿論、構造すら決定されていないものが多い。
本研究は吸着原子の原子価を明らかにするとともに、低速電子線回折により、表面シリサイドの構造と価数との関係を系統的に明らかにすることを第一の目的おり、まず、タリウムやインジウムが取り上げられる。次いで走査トンネル顕微鏡観察等により、表面シリサイドの形成過程を原子レベルで解明することが計画されている。それ等の成果を踏まえて、最終的には表面シリサイドを純粋表面作動のダイオ−ドやトランジスタ−などの表面材料として利用することが検討される。本研究により、シリコン表面における各種金属原子とシリコン原子との相互作用についての基礎的な知見が与えられるだけではなく、広く物質表面での化学反応についての重要な一側面が明らかにされるものと期待される。 |
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半導体ナノロッドの光化学的構造制御と光エネルギー変換デバイスへの応用 |
名古屋大学 大学院工学研究科結晶材料工学専攻 教授 鳥本 司 |
半導体ナノロッドはその形状異方性から光エレクトロデバイスへの応用研究が盛んである。例えばCdSeナノロッドとポリチオフェンとをハイブリッドさせることによる太陽電池の作製が試みられ、ナノロッド形状の半導体粒子を用いることが高効率な電荷分離に極めて有効であることが報告されている。しかし半導体ナノロッドの形状制御は、反応温度・時間の変化による職人技的手法のみが報告されており、その再現性・一般性に乏しい。従って、簡便で再現性よくロッド形状を制御する方法が開発できれば、ナノロッドの物理化学特性を制御し、さらに高機能な光エネルギー変換デバイスが作製できる可能性がある。
本研究では半導体ナノロッドをSiO2で被覆した複合体(SiO2/半導体rod)に着目し、サイズ選択的光エッチング法を応用することにより、コアである半導体ナノロッドの形態制御法を確立し、得られた複合体のナノ構造と光化学特性との関係を詳細に検討する。さらに、SiO2シェル内部の半導体ナノロッド上にその光触媒作用を利用して金属ナノロッドを成長させ、金属−半導体ヘテロ接合を持つ単一ナノロッドを作製し基板上に配列させて、光生成した電子の流れを制御することにより高効率太陽電池を作製する。これまでにグレッチェルセルの増感剤として半導体ナノロッドを用いる研究は系統的に行われておらず、本研究は新規原理で動作する太陽電池の開発のためのブレークスルーとして期待される。 |
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シリコンナノ粒子を分散させた機能性炭素系薄膜の作製に関する研究 |
弘前大学 理工学部 物質理工学科 助手 中澤 日出樹 |
シリコン(Si)ナノ粒子は、比較的効率高く、室温で可視部の発光をすることで注目を集めている。そして絶縁体であるSi酸化膜で覆われたSiナノ粒子が作られ、研究されてきた。それとは異なるダイアモンド様炭素(DLC)薄膜中にSiナノ粒子を分散させたものを作製する。これは電流注入による可視発光素子の創製を可能にする。またSiナノ粒子は粒子サイズを変化させると、量子サイズ効果により近赤外から青色まで発光させることができると考えられる。メタン、アルゴンおよびSi源としてモノメチルシラン(SiH3CH3)を用いた高周波プラズマ化学気相成長法(CVD)法により作製したDLC薄膜中に、埋め込まれたSiの球状微粒子を偶然作製できた。この方法でSi微粒子のサイズと構造を精度よく制御する技術、および微粒子をDLC薄膜中に埋め込む技術の開発を目標とする。現在約80nmの球状Si微粒子ができている。プラズマの放電時間および圧力などを制御することで、結晶性のSi微粒子を作り、そのサイズを3〜100nmに変化させようとしている。応用につながる将来性のある研究である。しかしDLC膜を作るのに水素ガスが効果的なようであり、気相中で微粒子は核形成をし、DLC薄膜上で形成時間と共にそのサイズが大きくなるようだ。そうだとするとSi微粒子の粒径制御を水素ガスが阻害しないか気になる。 |
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希土類添加シリコン酸化膜を用いた集積回路用・波長1.5μm発光材料における発光メカニズムの解明 |
熊本大学自然科学研究科 情報電気電子工学専攻 教授 中村 有水 |
「半導体集積回路の動作周波数は3GHzに達しており、集積回路内における配線は伝送速度の低下、配線間の電磁波干渉によるクロストークなど多くの問題に直面している。インテル社は集積回路内の比較的長距離の配線において、光による信号伝送を提案している。これを低コストで実現するため、シリコン(Si)系材料をベースとした光デバイス(発光、受光、変調、導波など)によるシステム構築を目指しており、一部の素子が研究段階ではあるが試作されている。その中で未開発なのが発光素子である。」と申請者は述べている。インテル社がこういったというのが、大学研究者からの研究動機としてはちょっとどうか。シリコン系の光デバイス研究は、ベル研究所、日本の大学で早くから行われていたが、なぜうまくいかなかったかを見据える必要がある。
ともかく、「Siが間接遷移型のため発光強度が極めて弱いからで、申請者は希土類であるエルビウム(Er)を添加したシリコン酸化膜(SiO2)に注目している。この材料はEr添加ファイバ増幅器(EDFA)として既に実用化されているが、Si基板上に集積回路と共に形成し、さらには電流注入型レーザの実現を可能とするためには、まだ多くの課題を残している」、と言っている。(電流注入のためには説明が要る。)Si基板上における光励起による光増幅器であるが、申請者は独自の方法(一酸化珪素:SiOの蒸着と熱処理)により形成したSiOxが、Siナノ結晶を含むSiO2より発光強度が大きくなることを見出している。本研究の目的は、「SiOxがなぜ発光強度が大きくなるかを解明すること、最終的はシリカ材料をベースとした電流注入型の光通信用レーザおよび光増幅器の実現を目指している。」
シリコンの微結晶では、単に欠陥の低減だけではなく、間接遷移ではない発光の兆候も見え始めているので、手近な応用に走ることなく地道な研究が要望される。
電流注入による酸化物、あるいはシリコン光デバイスの研究には、それなりの戦略が必要である。化合物半導体が築いた膨大な基礎研究をベースにした材料とデバイスの牙城を揺るがすには相当の覚悟がいる。 |
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カーレンズモード同期Yb:YAGセラミックスレーザにおけるYAGセラミックスのカー媒質としての特性評価 |
茨城大学 工学部メディア通信工学科 講師 中村 真毅 |
半導体レーザ(LD)励起Yb:YAGレーザは加工用レーザとして注目されている。これにモード同期をかけるとフェムト秒レーザが作製でき、現用のTiサファイアのフェムト秒レーザに比べて飛躍的に小型化できると期待されている。本研究は、自ら開発したLD励起Yb:YAGセラミックスレーザのカーレンズモード同期を得るために、YAGセラミックスのカー媒質としての特性を評価することを目的とし、最終的には可搬型フェムト秒レーザの実現を目指す意欲的なものである。従来、半導体過飽和吸収体を用いた受動モード同期でしかフェムト秒が実現されていないが、ここでは、共振器内に十分に長い純粋YAGセラミックスを挿入し、カーレンズ効果を促進するためにYb:YAGセラミックスの両端だけでなく、カー媒質の両端にも凹面鏡を配置するなどの工夫によってその実現を図ろうとしている。具体的には、Yb:YAGセラミックスの分光特性の評価後、Yb:YAGセラミックスレーザの発振特性を明らかにする。ついで、分散補償実験を行った後、カーレンズモード同期の実験に移る。
これまでに培っているYb:YAGレーザの設計と開発の経験、フェムト秒レーザ開発の経験を活かして自作のセラミックスレーザで可搬型フェムト秒レーザが実現できれば、原子力分野でのレーザ除染、産業分野でのレーザ微細加工、医療分野での手術用レーザメスなどへの応用ができ、波及効果が大きい。 |
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イオン照射によって化合物半導体表面に形成されるナノセル構造−新しい系の探索
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高知工科大学 総合研究所 助手 新田 紀子 |
GaSb, InSb, Geに低温(〜150K)で、60 kVに加速したSnイオンを1015ions/cm2程度照射すると、表面にナノオーダーのセル構造が形成されるという興味ある現象を見出している。形成された構造は直径が50nm、深さ250nm、壁の厚さ10nmのセルの集合体である。そしてこのセル構造はイオン照射によって固体内に導入される点欠陥が、移動することで形成されるというメカニズムを提出している。このセル構造は現在のところGaSb, InSb, Geにしか見出されていない。このような構造は、イオン注入条件(点欠陥挙動の条件)、例えば注入温度、注入量、加速電圧を選ぶならば、これら以外の無機物質でも形成される可能性があると考え、多くの物質系を対象に、セル構造が形成される系の探索を試みようとしている。
これまでに希ガスのイオン照射による類似の実験は多くあるが、その場合はこのような興味ある現象は観測されていない。そこでナノセル構造が観測されたGaSn,InSb,Geの構成元素とSnイオンに着目して周期律表を眺めてみた。Gaを除いてすべてSnそのものかSnに隣接している元素である。またPbは隣接しているがSnより質量がずっと大きい。このことからセル構造形成には、イオンとの運動量の授受,化学的な効果(結合性)が利くと思われる。そこで希ガスではない、しかし不活性な他のイオン種を用い、それに対応した物質系を選んで実験をしてみてはどうか。 |
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表面ポテンシャル制御に基づくAlGaN/GaN高温動作ガスセンサーの開発 |
北海道大学 量子集積エレクトロニクス研究センター 教授 橋詰 保 |
環境問題や有毒ガス対策、燃料電池用水素ステーションや自動車・各種機器等における水素漏洩対策などに、高感度・超小型ガスセンサーの開発が要請されている。これまでに種々の方式の半導体ガスセンサーが提案されており、シリコンMOS構造を基本構造とした水素センサーの開発が展開されている。しかし、シリコンの動作温度はたかだか150℃程度までであり、耐環境性に優れた材料とは言い難い。
本研究は、触媒作用・水素吸蔵作用の非常に高いパラジウムと、広い禁制帯幅を有する窒化物半導体(AlGaN/GaN)ヘテロ接合を利用して水素ガスセンサーを試作し、AlGaNの表面ポテンシャル制御によりセンサー特性の高性能化をはかり、300〜500℃の高温でも安定動作する水素ガスセンサーを開発することを目的としている。二次元電子ガスの活用により高感度であること、ワイドギャップ半導体活用によって高温まで動作することに特徴がある。すでに、AlGaN表面制御に独自の技術を開発し、ショットキー特性のリーク電流低減を図るなど、ユニークな成果を出している。将来、AlGaN系通信デバイスとの集積化などが期待でき、広範囲の環境センシングシステムへの展開も期待できる。 |
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オゾンの強酸化力を利用した材料合成 |
京都大学 大学院人間環境学研究科 助手 林 直顕 |
高酸素圧下で遷移金属酸化物結晶を合成するとFe4+~6+, Ni3+~4+,Cu3+などの異常高原子価化合物を得ることができるが、これ等の物質の中には興味深い物性を示すものが報告されている。しかし、高酸素圧下での合成を行うためには特殊な高圧反応装置を必要とし、その合成の困難さのため、未だ異常高原子価化合物についての研究はあまり進んでいない現状にある。
本研究者は最近レ−ザ−アブレ−ション法による酸化物薄膜作製の際、製膜後に高酸素圧の代わりとしてオゾンを吹き付けながら冷却すると、通常の条件下では合成できないSrFe4+O3やCaFe4+O3単結晶薄膜が作製できることを見出している。本研究はこのオゾンを用いる新しい異常高原子価遷移金属化合物の合成法を確立することにある。対象物質としては、先ず、欠陥ペロブスカイト型構造をもつCaFeO2.5-CaFeO3系を選び、酸素ボンベからの酸素ガスをオゾン発生器に通すという簡便な方法でオゾンを得て、反応容器に工夫を施すことにより、合成を行うことが計画されている。CaFeO3結晶合成の予備実験では既に成果が得られており、更なる研究を推進することにより、手軽な方法で異常高原子価酸化物結晶を得ることが可能となり、これ等の興味ある物質群に関する物性研究が進展するものと期待される。 |
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シリコン酸化膜を介した新規表面・薄膜デバイス構造の集積化 |
東北大学 金属材料研究所 助教授 藤川 安仁 |
「情報技術の基盤となる半導体素子性能向上の基本は、素子面積の縮小化と微細化技術の急速な進展にある。指標となるMOSFETのゲート長は既にサブミクロン領域を下回り、ナノメートル領域に移ってきている。その過程で重要な問題点の1つは、表面垂直方向の構造サイズがチャネル長に対して無視出来ない事が要因となって生じる短チャネル効果であり、解決手段の1つがSOI(Silicon on Insulator)技術である。ところが、表面構造が基本的にバルクのシリコンと同様であることからあまり研究の対象とならず、近年ようやくSOI表面自身に関する研究や、SOIをベースとした薄膜・ナノ構造作製の試み等の基礎的な研究が行われ始めるようになった。申請者は、このSOI技術には薄膜・表面の研究分野及びその応用に関して下記に記す様な革新的要素が含有されていると考え、そのような観点に基づいた新しい研究の展開が必要である」、と申請者は指摘している。
そして本申請では、SOI表面の上記潜在的重要性に鑑み、SOI表面処理の基礎技術を基に、物質系のシリコンに対する接合技術を組み合わせ、薄膜・表面分野におけるプロトタイプとなるような研究推進を目的としている。半導体物性上、またLSI技術の発展に寄与できるものとして、本格的な研究を期待する。興味のみで間口を広げることなく、重要事項に集中して成果を挙げられたい。なお、申請書に記載のスケーリング則には、Moore則とDenard則があり、もし未だならこれらの原著論文を読んだ上での適切な引用が望まれる。 |
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水素機能性を有する新規な有機―無機ハイブリッド系ナノ材料の開発 |
近畿大学 理工学部応用化学科 助手 藤島 武蔵 |
水素の製造、貯蔵、利用に関する研究開発が活発に行われているが、なかでも、極めて高い伝導性をもつ高速プロトン伝導体、高密度かつ高速に水素吸蔵・放出が可能な水素貯蔵媒体は、その実現に期待が寄せられている。本研究では、新規な有機−無機ハイブリッド系ナノ材料を開発し、低加湿型高速プロトン伝導体に代表される水素機能性を実現することを目的とする。 申請者は既に、プロトン伝導性ポリマー被覆無機ナノ粒子、例えば、多糖類被覆白金ナノ粒子の合成に成功し、燃料電池の固体電解質であるNafion膜に匹敵するほどの高い伝導性を見出している。プロトン伝導性ポリマー被覆無機ナノ粒子申請者が既に開発に成功しているプロトン伝導性ポリマー被覆無機ナノ粒子に、酸塩基型ポリマーを導入する。また、被覆剤にバイオポリマーを用いることで、従来のフッ素系ポリマーにはない環境適応性が実現できる。さらに、水素吸蔵特性および水素による物性制御についても検証し、燃料電池などの水素機能性デバイスへの応用を目指す。酸性基と塩基性基をもつ被覆ポリマーにより、水素結合系に基づくプロトン輸送パスを構築でき、無機ナノ粒子の表面効果を利用した高速プロトン伝導が期待できる。これを応用することで、最近、注目を集めている低加湿型燃料電池の固体電解質が実現できると考えられる。また、被覆ポリマーの多糖類は、資源が無尽蔵で再生可能なエコ材料であり、従来のイオン伝導性材料とは一線を画するものである。さらに、水素により、金ナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子等の諸物性を制御できれば、新しいタイプの水素機能性デバイス開発が期待される。 バイスが開発可能と考える。
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発光効率の改善に向けたInGaN/GaN量子井戸埋め込みナノワイア構造のボトムアップおよびトップダウン的作製 |
京都大学 大学院工学研究科 講師 船戸 充 |
「半導体固体照明が、蛍光灯や白熱ランプに代わる次世代照明光源として注目されている。特に発光ダイオード(LED)の小型で長寿命特性はは蛍光灯を凌駕しており、新しい応用の開拓が進むであろう」、と申請者は述べている。ただし、蛍光灯の寿命は製品として制御下にあるものであり、照明には面としての大きさが必要であることから、記述の慎重さが必要であろう。また、申請者は「高品位固体照明と固体撮像デバイスには微妙な色合いの差を際立たせるための照明スペクトルのシンセサイズが必要とされるとしている」が、そのとおりである。
窒化物半導体は発光波長を決定する禁制帯幅が、AlNの6.2 eV (波長200nmに相当)からGaNの3.4 eV (365nm)を経てInNの0.7 eV (1770nm)に至るまでで広い範囲にわっており、重要な可視域全体をカバーできる、毒性がないため環境的にも優れた材料であるとして本研究でもInGaN/GaN量子構造を採用することにした、と述べている。InPの禁制帯幅は、0.63eVが認められつつあるようだ。
本研究では、「発光層であるInGaN量子井戸構造を埋め込んだGaNナノワイア構造の製作を提案する。すでに2001年にはIII-Vs review誌において窒化物半導体による微小光源の重要性が記事になっているが[vol.14、 no.5、 pp.32-37 (2001)。]、現状では作製方法がまだ十分には確立されていない。」、と申請者は述べている。(この構造は、岸野克己教授、Celleja教授が1995年ごろそれぞれ独立に発見したものであり、適切な表現が必要であろう。)
本研究では、「そのための方法としてボトムアップおよびトップダウン的なアプローチを試み、窒化物半導体による新しいナノワイア発光構造を製作すること、さらにその物性を評価することを目的とする。」としている。この目的に対して、「結晶成長には現有の有機金属気相成長装置を、評価にも現有の装置群を用いて以下に述べる検討を行う」、と言っている。
この構造は、もちろん青色から赤色にいたるまで効率よく発光が可能な構成であり、面発光レーザも視野に入れた研究が日、スペイン、米、台、韓などで進んでいるもので、期待感が大きい。MOCVD法による技術の確立、コラム表面における基礎物性など、地道な研究を望む。 |
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ランタノイドオキシ硫酸塩の大容量酸素ストレージ機能に関する研究 |
熊本大学 工学部物質生命化学科 教授 町田 正人 |
申請者は希土類オキシ硫酸塩系材料Ln2O2SO4が非常に大きな酸素吸蔵・放出能を有することを発見した。この発見を基に本研究がスタートしたが、初年度である17年度においてはそれら物質系の中でも特にPr2O2SOが、典型的な酸素ストレージ材料であるCeO2-ZrO2の2-3倍の酸素の吸蔵、放出効果を有することを見出した。また、希土類オキシ硫酸塩の O2 吸蔵、放出は、オキシ硫酸塩Ln2O2SO4とオキシ硫化物Ln2O2Sの間での可逆的な酸化還元によっておこる現象であることを見出し、理論的には、2mol-O2/molのO2吸蔵、放出が可能である。このような大きな酸素吸蔵の効果は、硫黄のS(VI)-S(-II) 間の酸化還元を利用する初めての例である。
申請者らはこのような興味ある現象を平成18年度の研究においてさらに高性能触媒開発に発展させようとしている。成果に期待したい研究の1つである。 |
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ランダム磁性体の特性を利用した透明強磁性弗素化合物の開発 |
鹿児島大学 大学院理工学研究科 助手 真中 浩貴 |
光通信に必須の材料である光アイソレータに用いる目的で、透明強磁性体を作ろうとしている。ファラデー効果(磁気光学効果)を利用して、光を一方向にだけ通すようにする。透明磁性体として現在利用されているのは、ガーネット系のフェリ磁性体である。しかしこれは強磁性モーメントが小さいので、試料を厚くする必要があり、光の透過量の低下を招く。そこで大きなファラデー効果が期待できる透明強磁性体の開発を目指す。
一般に透明性と強磁性とは相反する効果であるため、K2CuF4を除いて透明強磁性体は見つかっていない。ところが1993年に透明反強磁性体MnF2と透明非磁性体ZnF2とを混ぜたMn1-xZnxF2で、強磁性モーメントが誘起されるという実験結果が報告された。このことに着目し、弗素化合物磁性体の作製は極めて困難であるが、まずフッ化物試料が作製できる電気炉を立ち上げた。そして真空ブリッジマン法を採用すると、良質な試料ができることがわかった。反強磁性体と非磁性体の混晶系を作製するため、KMF3 (M=Mg, Mn, Co, Ni, Zn) 試料を化学量論比にしたがって混ぜ合わせて単結晶化し、 フッ化水素(HF)中において高温アニール処理などで均一な試料を得ようとしている。このように新規な透明強磁性体開発を取り組んでいる。よい所に着目し、フッ素化合物が扱える電気炉から作るなど、大変意欲的である。 |
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ルテニウム化合物のナノ構造制御と電極触媒への応用 |
佐賀大学 理工学部機能物質化学科 助教授 矢田 光徳 |
申請者のグループは、種々の有機分子との相互作用を利用して特殊なナノ構造を有するルテニウム化合物を得て、電極触媒としての電気的特性・触媒特性の関係を調べようとしている。すでに、申請者らはメソポーラス体やベシクル状中空球状粒子やナノチューブ状のルテニウム化合物を得ている。申請者らのアプローチのユニークな点は種々の有機分子を用いることと尿素を用いた均一沈殿法によりナノ構造を得ていくことである。透過型電子顕微鏡などによるキャラクタリゼーションと得られた材料の特性との対応を系統的に付けながら研究を進行させることを強みとしており、今後の成果を期待したい。 |
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高温ラマン散乱分光法によるケイ酸塩ガラス融液中の硫酸イオンの化学状態の解析 |
東京工業大学 大学院理工学研究科物質科学専攻 助教授 矢野 哲司 |
ディスプレイ用基板ガラスはもちろん汎用の窓ガラスでも欠点のない高品質のガラスが要求されている。代表的な欠点である微小な気泡を除去するため、現在、清澄剤として硫酸ナトリウムがガラス原料に添加されている。硫酸ナトリウムは高温で分解して2酸化硫黄、酸素ガスを生成し、微細な気泡を大きくして浮上させ、除去するのに役立つ。本研究は、1200〜1500℃の高温のガラス融液中で硫黄化合物がどのような状態で存在するかを調べ、清澄作用を明らかにして、ガラス製造の省エネルギー化のための知見を得ることを目的としている。
本研究では、ケイ酸塩ガラスについて、高温ラマン分光法によって硫黄酸化物のS-O伸縮振動ピークをその場測定して温度、組成、雰囲気など熔融条件による変化を詳細に解析し、硫黄酸化物のガラス中への溶解状態と清澄効果との関係を明らかにする。
本研究により高温ガラス融液中の硫黄酸化物の挙動が明らかになれば、ガラス製造プロセスについて低温清澄の促進を可能にする方法を見出し、省エネルギー化と高品質化を両立させるプロセスの開発に寄与することが可能になり、ガラス工業にたいするインパクトは大きいと思われる。 |
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酸化物系超伝導薄膜における人工ピンニングセンタの高分解能電子顕微鏡法による微細構造解析および計算機シミュレーション |
九州大学 大学院工学府材料物性工学専攻 技術専門職員 山田 和広 |
申請者は高温超伝導体のパワー応用に向けて人工ピンニングセンタ導入の効果に注目している。この効果はナノメートルサイズの微細析出構造が重要な役割を果たすことが予想される。申請者は透過型電子顕微鏡の操作を特技としており、また、超伝導特性の評価も行うことのできる立場を活用して、酸化物超伝導薄膜に導入したBaZrO3により形成される人工ピンニングセンタの構造・組織解析を行い、より有効なピンニングを行うための指針を得ようとするものである。同大学はこのような研究において理論家から測定まで多彩な人材を擁しており、本研究には最適の環境を有していると見受ける。成果を期待したい。 |
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多孔質ガラス-金コロイド-有機ポリマーハイブリッドによる刺激応答性分離膜の創製 |
兵庫県立大学 大学院工学研究科 助手 遊佐 真一 |
タンパク質、糖、脂質、核酸などの混合物である生体物質から目的のサイズの成分を分離するために従来から用いられてきたセルローズなどの有機高分子膜には、細孔径の制御が難しく、また、耐久性が高くないという問題がある。本研究は、耐久性の高い無機物の多孔質シリカガラスの細孔内に刺激応答性の高分子を導入することによってpHや温度によって分画可能なサイズが変化する有機無機ハイブリッド分離膜を創製しようとするものである。
本研究では、外部刺激によって体積が著しく変化するポリマーとして、ポリアクリル酸とポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を選び、SH基を介して ポリマー−金コロイド−シリカ細孔表面の結合をつくり、これによって、細孔の有効寸法の調節を可能にする計画である。多孔質シリカの細孔径、ポリマーの鎖長、金コロイドの粒径などの条件を最適化する方向で計画を推進する。この研究により、タンパク質を始め、その他各種の生体分子のサイズの違いによる分離が可能になるという大きな成果が期待される。さらに、サイズの刺激応答性を利用して、多孔質シリカの空隙に薬物を取り込ませ、制御された放出を行なわせることのできるドラッグキャリアーシステムの構築ができると期待される。 |
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SOI基板上モノリシック集積形光アイソレータに関する研究 |
芝浦工業大学 工学部電子工学科 助教授 横井 秀樹 |
「光通信システムでは、光ファイバの接続点などからの反射光による半導体レーザに発振不安定が生じ、その防止のため、非相反素子である光アイソレータが必要不可欠である。近赤外領域では磁性ガーネットが用いられるが、将来における光電子集積回路の実現を考慮すると、導波路構造により光アイソレータを製作すること、及び他の半導体素子との集積化が容易なことが望まれる。」、と申請者は述べている。
現在、様々な研究機関で研究されている導波路形光アイソレータは、導波層となる磁性ガーネットをガーネット基板上に成膜して得られる磁気光学導波路を利用している。この場合、良好な特性の素子が実現されても、他の素子との集積化は容易ではない、そのため、半導体基板上へ光非相反素子が形成できれば申し分ない。 と指摘している。本研究では、SOI(Silicon on Insulator)基板上に光アイソレータを製作しようという意欲的な研究である。ただ、アイソレータのいらない光回路構成の研究も行われているので、冷静に分野の消長を視野に入れての研究が望まれる。 例えば、屈折率差の大きいSi細線導波路なども見据えたいわゆる“シリコンフォトニクス”への発展などが期待できよう。 |
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リン酸カルシウム系新規光触媒の開発 |
東京大学 国際・産学共同研究センター 助手 吉田 直哉 |
本研究の目的は、非TiO2型の新規光触媒材料であるチタンアパタイトの反応機構について構造面からの研究を進め、その知見を生かして新規光触媒材料を創生することである。具体的にはチタンアパタイトの構造と光触媒反応メカニズムとの関係を明らかにし、その構造をもとに新規な光触媒材料を探索・開発することをめざしている。光触媒機能を有する材料としては酸化チタン、チタンオキシナイトライド等金属酸化物を中心に近年も材料開発がなされているが、安全性・価格・安定性等の問題から実用化に辿り着いている材料はTiO2の他は極めて少ない。その中で本研究者が開発したチタンアパタイトは、TiO2以外ではほぼ唯一実用化に至っている光触媒材料である。チタンアパタイトはTiO2ほど光触媒活性は高くないものの、特にウィルスやバクテリア・蛋白質等の吸着性が良く、樹脂と複合化した際に樹脂の劣化がかなり少ないことがわかっている。このような性質からチタンアパタイト型光触媒が特に繊維や樹脂等への応用から将来的に産業に果たすであろう役割は大きい。アパタイト構造を中心に探索を行うことでTiO2とは異なる特色を有する、これまでにない新規光触媒材料への道が拓かれ、光触媒のさらなる応用・産業展開を促進することが期待される。 |
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ナノ粒子間に作用する力と粒子運動による焼結の微構造形成原理 |
東京工業大学 応用セラミックス研究所セキュアマテリアルセンター 教授 若井 史博 |
焼結とは高温でナノ・ミクロ粒子間に結合が形成される現象であり、種々の機構による粒子形態の変化を伴う。即ち、焼結の過程では微視的に複雑に入り組んだ粒子表面や粒界のダイナミックな変化が起こり、焼結機構の解明にはそのダイナミックな動きを捉えることが重要である。しかし、従来焼結については空隙体積の収縮による相対密度の増加というスカラ−量の巨視的な変化の側面からのみ記述がなされてきた。
本研究はセラミックスの焼結過程で起こる様々な現象を微視的なスケ−ルで動的に捉え、形成される微構造との関係を明らかにすることを目的としている。まず、粒子スケ−ルでの表面、粒界運動の定式化を行い、3次元シミュレ−ション・プログラムの開発が進められる。同時に膨大な数の粒子から構成される複雑な曲面構造のデ−タベ−ス・システムを構築する。更に、表面エネルギ−と粒界エネルギ−に起因する粒子間力をベクトルとして解析し、それが焼結の各段階でどの様に変化し、粒子運動を生じさせるかの解明が試みられる。本研究者は焼結プロセスへのアプロ−チとして、粒子間結合のポテンシャル・エネルギ−曲面の考えを提唱するとともに、2粒子焼結が「焼結力」に駆動された粒子運動として記述できることを明らかにしている。本研究はこれ等の概念を基礎として、焼結機構に対する理解を更に深めようとするもので、その成果が期待される。 |
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逆オパール型炭素材料とイオン液体を用いた電極/電解質界面のナノ構造制御 |
横浜国立大学 大学院工学研究院 教授 渡邉 正義 |
燃料電池やリチウム電池、あるいは電気2重層キャパシタなど出力密度が大きな課題となる電気化学エネルギー変換装置では、電極における電解質と電強との接触面積が大きいほど高性能を出せる可能性がある。本研究は申請者らの開発した非常に大きな表面積を有すると考えられる逆オパール型ナノサイズ多孔質炭素材料を電極材料として用途開発を行うための基礎研究に相当する。この多孔質体は百ナノメートルオーダーの空隙を有しており、その実効的表面積はきわめて大きいと考えられる。実際のイオン性電解質と共存させ、電気化学系を構築したときにどのような性質を示すかが注目されるところである。新たな電池材料としての性能にとりあえず注目したいと考える。 |
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